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Kanako Kitahara's Blog

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青い田んぼで笛吹くな

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津軽平野に広がる田園では、田植えが一段落したようです。これは田舎館村の本日の風景です。IMG_8757

 

整然ときれいに植え付けられた稲は、これからどんどん育っていきます。ちょっと古い写真ですが、これは2012年7月31日の田園風景です。青々とした風景が広がっています。

IMG_0316

 

この青田と音の関係について、筑波大学の浪川健治教授が興味深い研究をされています。かつて弘前藩時代には、毎年旧暦の5月から6月にかけて「青い田んぼで笛を吹いてはいけない」(「青田之内笛吹候停止御触出」)というお触れがでていました。

現代で考えると、ちょうど7月上旬くらいにあたります。稲の苗が成長して、田んぼをおおうようになる頃、笛を吹くことは嫌われていたということになります。

この禁止令はなぜだされたのか、その理由が書かれたものは残っていませんが、浪川先生は、笛の音がヤマセの音を思い起こさせたからではないかと指摘しています。ヤマセとは、田植えが終わる頃から通常は酷暑になる夏にかけて吹いた冷たい東風でした。ヤマセが吹くと、津軽地方は飢饉になりました。

笛の音がヤマセと似ている、あるいは笛を吹くとヤマセを呼ぶ。人々はヤマセを恐れてました。だから、青田で笛を吹かないようにして、稲の実りを祈ったのでしょう。

身分制社会だった近世時代、民衆には民衆の音の世界がありました。青田で笛を吹くなという禁止令は、民衆と音との関係を示す一つの興味深いケースだったのです。(浪川健治「不作忌避の禁忌と豊穣祈念ー「長期の一九世紀」における社会意識の系譜ー」『米沢史学』31、2015)

最後に、2016年8月の田園風景です。ことしも豊作になりますように。

IMG_8926

 

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