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Asian Studies on the Pacific Coast (ASPAC), conference 2016 発表要旨

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Asian Studies on the Pacific Coast (ASPAC), conference 2016 におけるパネリストの各発表は以下の通りです。

  1. Samurai Class and Music in Early Modern Times: An Example from Hirosaki Domain

Emiko Takenouchi (Kyoto City University of Arts, Japan)

近世武士階級は一般に能楽というイメージが強い。しかし武家思想の中心だった儒学の礼楽思想には実践も伴っていたという近年の研究成果を踏まえつつ、この発表では弘前藩において藩校で雅楽を教習し、藩主の前で奏楽を行なっていたことを報告した。

 

 

2. “Diverse Sounds: Global Influences on Local Music and Sounds in Nineteenth-Century Northeastern Japan”

Gideon Fujiwara (Lethbridge)

19世紀日本の地方文化に与えたグローバル化の影響を音や音楽を通して検討した報告である。弘前藩の町人で画家でもあった平尾魯遷は、耳にした洋楽を邦楽と比較した記録や絵を残した。ここでは、この魯遷の記録に基づき、彼が城下町弘前や蝦夷で耳にした不協和音の意味を考察を試みている。グローバリゼーションや社会変革の影響を受けた音や音楽の連続と断絶を研究することで、19世紀日本が経験した近代化のより深い洞察につながるものと考えられる。

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3. Reception of Western Music and the Samurai Class of Early Meiji Japan
Kanako Kitahara (Aomori Chuo Gakuin University, Japan)

近代日本の洋楽受容をめぐる報告である。北奥の弘前藩上級武士だった楠美家は、平曲を伝承する「音楽の家系」を自負する家柄だった。この報告では、日本でも早い時期からプロテスタントが伝わった城下町弘前において、西洋文化や洋楽を受け入れつつ同時に伝来の邦楽を守ろうとした楠美家の人々の活動に注目することで、近代移行期の文化変容に直面した士族層のあり方に関する考察を行なった。

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4. he Last Words of a Traditional Musician: Analysis of “Petition” by Heikyoku Performer Tateyama Zennoshin

Suzuki Hirotaka (Dong-Eui University, Korea)

上記の北原発表の中でとりあげた楠美家の一員だった館山漸之進の邦楽保存活動をより掘り下げた報告である。平曲家であった館山漸之進は、邦楽保存を訴えて当時の東京音楽学校に邦楽調査掛設置に大きく寄与した人物で在る。彼は生家に伝わる伝統芸能保存に全力を注ぐものの、志半ばにして此の世を去らなければならなかった。この報告では死を覚悟した館山漸之進が残した「情願書」を読み解くことで、近代日本における伝統芸能保存活動の挫折とその意味を考察した。

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