近代移行期における「音」と「音楽」 ―グローバル化する地域文化の連続と変容―

Academic Research

弘前城
研究種目:基盤研究(B) 課題番号:15H03232 2015-2019 研究代表:北原かな子

研究の全体構想

本研究は、幕末から明治にかけた北奥羽地域の、民衆の「音」や武士階級の「楽」など、音楽に関わる諸相に注目し、移行期の社会と文化について、グローバル化の視点も加えて考察しようとするものである。士族層から民衆までの広い階層を対象とし、①地域の多様な民衆芸能の「伝統(=音)」生成を社会体制変容の中に捉えると共に、②奏楽を担った士族層の邦楽素養(=楽)と近代以降の洋楽普及への影響関係を明らかにする。さらに③箱館開港の影響下にあるこの地域の「北からのグローバル化」により、地域文化がどう変容し、新たな文化創出につながったかを分析する。 音に関わる感性の視点から、歴史の中の人間像の変化を分析・総合する複合的文化論を目指しており、社会体制変化の背景にある文化の連続性について考察することが最終目的である。
メンバー

メンバー紹介

  • 研究代表者 北原かな子 青森中央学院大学 教授
  • 研究分担者 浪川 健治 筑波大学人文社会科学研究科 教授
  • 研究分担者 古家 信平 筑波大学人文社会科学研究科 教授
  • 研究分担者 武内恵美子 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 准教授
  • 研究分担者 山下須美礼 帝京大学文学部 准教授
  • 研究分担者 鈴木 啓孝 熊本大学大学院人文社会科学研究部 文学部歴史学科准教授
  • 研究分担者 吉村 雅美 日本女子大学文学部 専任講師
  • 研究協力者 Gideon Fujiwara (University of Lethbridge, Canada)

活動紹介

本研究の活動内容はブログでご紹介をしていきます。
音の響きで歴史を学ぶーひらめき☆ときめきサイエンスより
シンポジウム@筑波大学(2015.10.17-8)
着々と(ひらめき☆ときめきサイエンス)
ひらめき☆ときめきサイエンス@青森中央学院大学part1
第8回-東アジア<霊性>・<平和>研究会
2016年度『<霊性>と<平和>』第2号
Asian Studies on the Pacific Coast (ASPAC), conference 2016
Asian Studies on the Pacific Coast (ASPAC), conference 2016発表要旨
   

業績

のちほど公開いたします。

イベント開催

音楽で学ぶ青森の近代―幕末明治の音楽を体験しよう― ポスター
平成28年9月4日(日)に青森中央学院大学で 音楽で学ぶ青森の近代―幕末明治の音楽を体験しよう― を開催します。 中学生・高校生を対象とした参加費無料のイベントです。 江戸時代、津軽の武士たちはどんな楽器を演奏したのでしょう? 明治天皇は、文明開化期の青森でどんな曲を聴いたのでしょう? この講座は、楽器や歌を体験しながら、昔の人たちの経験や想いを たどる試みです。 音の響きから一緒に歴史を考えてみませんか。 詳細はこちら ※定員に達しましたので受付を終了しました。

関連する科研成果

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科研費